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第34話 鼓動の主

مؤلف: 菊池まりな
last update تاريخ النشر: 2026-08-03 19:00:13

 夜、布団の中で仰向けになると、胸の奥で音が二つに分かれる。

 そのことに気づいたのは、いつからだったか、もう思い出せない。片方はいつもの、聞き慣れた自分の鼓動。もう片方は、それよりわずかに速く、まるで何かに急いているような、せわしない音だった。

 トク、トクトク。トク、トクトク。

 耳の奥ではない。もっと深いところで鳴っている。

 仕事の疲れだろう、と思うことにした。ここ数ヶ月、残業が続いていた。以前、軽い不整脈を指摘されたこともある。だから体の音には、人より敏感なのだと、自分に言い聞かせた。

 病院では異常なしと言われた。心電図にも、聴診にも、何も引っかからない。医者は「ストレスでしょうね」と、判で押したように言って、それ以上は取り合ってくれなかった。

 昼休み、給湯室で美咲に声をかけられた。

「最近、顔色よくないね」

 うれしかった。誰かに気づいてもらえたことが。だから、つい話してしまった。

「実はさ……胸の内側で、音が二つ聞こえるん
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